ピックルボールの初心者が最も誤解しやすい校則。それがキッチンです。
「キッチンには入ってはいけない」と覚えていませんか。
その覚え方は、半分正解で半分不正解です。正確には、キッチンに触れた状態でボレーしてはいけない。ボールがバウンドした後なら、中へ入って打って構いません。
最初に結論
キッチンは立入禁止区域ではなく、ボレー禁止区域です。バウンド後なら中で打てます。ボレーするときは、身体・パドル・衣服・勢いのすべてをキッチン外へ置きます。
キッチンとはどこ?
正式名称はノンボレーゾーン(Non-Volley Zone/NVZ)です。ネットから両側へ7フィート、約2.1mの範囲で、横幅はコート全幅の20フィート、約6.1mです。
- ネットからノンボレーゾーンラインまで:約2.1m
- 左右のサイドライン間:約6.1m
- ノンボレーゾーンラインもキッチンの一部
- 左右のサイドラインも境界を構成する
「キッチン」は通称です。冷蔵庫も流し台もありません。あったらプレーに支障が出ます。ちなみに由来は「ピックル(犬)はキッチン(台所)に入ってはいけない」という、なんともアメリカっぽい文化から来ているそうです。あまりピンと来ませんね笑
判定の基本は3つだけ

- その打球はボレーか
- 選手や身につけた物がキッチンへ触れたか
- ボレーの勢いが終わる前に触れたか
ボレーでなければ、キッチン内で打つこと自体は問題ありません。ボレーなら、接触と勢いを確認します。
ボレーとグラウンドストロークの違い
| 打ち方 | 意味 | キッチン内 |
|---|---|---|
| ボレー | ボールが地面へバウンドする前に打つ | 禁止 |
| グラウンドストローク | ボールが一度バウンドした後に打つ | 可能 |
スマッシュだけがボレーではありません。柔らかいボールを空中で軽く返す「ボレーディンク」も、バウンド前ならボレーです。打球の強さではなく、バウンド前か後かで判断します。
キッチンへ入ってよい場面
1. ボールがバウンドした後に打つ
キッチン内へ落ちたディンクを、バウンド後に中へ入って返すのはOKです。打った後も、すぐ外へ出なければ反則ということはありません。
2. ボールを打たずに中へ入る
ラリー中に立っているだけなら、キッチンへ入れます。ただし、そこにいる状態で次の球をボレーしてはいけません。
3. パートナーが中にいる状態で自分が外からボレーする
パートナーがキッチン内にいるだけで、あなたのボレーが自動的に反則になるわけではありません。ただし、ボレー動作中にそのパートナーへ触れ、パートナーがキッチンに接触している場合は反則になり得ます。
4. キッチン上の空間へパドルを伸ばす
キッチンは床面上の区域です。両足を外へ置いたまま、パドルや腕をラインの上空へ伸ばしてボレーすることはできます。ただし、パドルや身体が床のキッチンへ触れないようにします。
入ってよい=入ったままボレーしてよい、ではありません
バウンド球を打った後、次の球をボレーしたいなら、先に両足を完全にキッチン外へ接地させ直します。
反則になる代表的な場面
1. キッチン内からボレーする
足がキッチン内にある状態で、バウンド前のボールを打つとフォルトです。
2. キッチンラインを踏んでボレーする
ノンボレーゾーンラインはキッチンの一部です。つま先の一部でもラインへ触れた状態でボレーすればフォルトです。
3. 外からボレーし、勢いで中へ入る
打った瞬間に両足が外でも、フォロースルーや身体の勢いでキッチンへ触れるとフォルトです。
4. ラリー終了後に勢いで入る
相手が返球をミスし、ボールがデッドになった後でも、直前のボレーの勢いでキッチンへ入ればフォルトです。先にポイントが決まったように見えても、勢いの判定は続きます。
5. パドル・帽子・衣服などが触れる
ボレー動作やその勢いによって、持っているパドル、着用している帽子、衣服、サングラスなどがキッチンへ触れればフォルトです。
6. キッチン内のパートナーへ触れる
あなたが外からボレーしても、ボレー動作中にキッチン内のパートナーへ触れれば、キッチンへ間接的に接触した扱いになる場合があります。
7. キッチンから跳び、外へ着地する前にボレーする
直前にキッチンへ触れていた選手は、ボレー前に両足を完全に外へ接地させ直す必要があります。中からジャンプし、空中でボレーして外へ着地しても、接地の順番が逆なのでフォルトです。
OK・NG早見表
| 場面 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| キッチン内でバウンド後に返球 | OK | ボレーではない |
| キッチン内に立って球を見送る | OK | ボレーしていない |
| 両足を外へ置き、パドルを上空へ伸ばしてボレー | OK | 床面のキッチンへ触れていない |
| ラインを踏んでボレー | NG | ラインもキッチンの一部 |
| 外からボレーし、勢いで中へ着地 | NG | ボレーの勢いによる接触 |
| ボレー後、相手のミスを見てから勢いで中へ | NG | ボールがデッドでも勢いの反則は成立 |
| 中から出て、片足だけ外へ接地してボレー | NG | 両足の再接地が必要 |
| 中から出て、両足を外へ接地後にボレー | OK | 外での接地を再確立している |
「勢い」はいつ終わる?
勢いは、ボールを打った瞬間に終わるわけではありません。フォロースルーと、その動作によって身体が進み続ける部分まで含めて考えます。
初心者向けには、次の状態になるまでキッチンへ触れないと覚えましょう。
- 身体のバランスを取り戻した
- 前方への動きを自分で止められた
- ボレー動作とは別の動作へ移った
境界的な場面は審判の判断になります。ギリギリで踏みとどまるより、余裕のある位置からボレーするほうが安全です。「三苫の1ミリ」は、なかなか現実には起きません。
キッチンから出た後の「両足再接地」
バウンド球を追ってキッチン内へ入った後、次の球をボレーするには、次の順番が必要です。
- キッチンから出る
- 片足を完全に外へ接地する
- もう片方の足も完全に外へ接地する
- それからボレーする
片足だけ外へ置き、もう片方が空中またはキッチン内にある状態では、再接地が完了していません。
先生の確認方法
「外・外・打つ」と足元で数えます。「外・打つ・外」は順番が違います。
サーブとキッチンライン
通常のラリーでは、ラインへ触れたボールはインです。ただしサーブには例外があります。
- サーブがキッチン内へ落ちる:フォルト
- サーブがキッチンラインへ触れる:短いサーブとしてフォルト
- サーブが正しいサービスコートのセンターラインへ触れる:イン
- サーブが正しいサービスコートのサイドラインやベースラインへ触れる:イン
キッチンラインは区域の一部なので、サーブはその線を越える必要があります。
ツーバウンドルールとの違い
| ルール | 何を禁止する? | 適用される時間 |
|---|---|---|
| ツーバウンドルール | サーブ直後、両チームが1回ずつバウンドさせる前のボレー | ラリー開始時 |
| キッチンルール | キッチンへ触れた状態でのボレー | ラリー中ずっと |
第4打以降でボレーできるようになっても、キッチン内からボレーできるわけではありません。
キッチンラインに立つ理由
キッチンは反則区域であるだけでなく、ピックルボール戦術の中心です。上級者はキッチンラインのすぐ外側へ立ちます。
- ネットに近く、相手へ角度を付けやすい
- 足元へ落とされる空間を減らせる
- 短い球へ早く反応できる
- 相手の速い打球を小さな動きで返せる
ただし、ラインぎりぎりに立つとつま先が触れやすくなります。初心者は数cmの余裕を取り、ボールを見る前に足元を安定させましょう。
ディンクでは中へ入ることもある
ディンクはキッチン内へ短く落とすショットです。相手のディンクがバウンドしたら、中へ踏み込んで返せます。
- ボールのバウンドを確認する
- 必要な分だけ中へ踏み込む
- 小さなスイングで返す
- 次にボレーする可能性があるなら両足を外へ戻す
毎回慌てて中へ飛び込む必要はありません。届く球は外から取り、必要なときだけ入るほうが姿勢を保ちやすくなります。
初心者向け練習方法
OK・NG読み上げ練習
2人一組で、片方が状況を読み、もう片方が判定します。
- 「中でバウンド後に打つ」→ OK
- 「ラインを踏んで空中の球を打つ」→ NG
- 「外からボレー後、勢いで入る」→ NG
- 「中から両足を外へ置き直してボレー」→ OK
外・外・ボレー練習
キッチン内でバウンド球を打った想定から、後退して両足を外へ置き直し、パートナーが手で投げた球をボレーします。速さより順番を優先します。
勢いを止める練習
キッチンラインから少し離れて立ち、柔らかいボレーを打った後、その場でバランスを保ちます。大きく踏み込まず、短いスイングで返す感覚を身につけます。
よくある質問
キッチン内へ入っただけで反則ですか?
いいえ。入ること自体は反則ではありません。中に触れた状態でボレーすることが禁止されています。
キッチン内でボールがバウンドしたら打てますか?
はい。中へ入って、バウンド後に返せます。
パドルがライン上空へ出たら反則ですか?
上空へ出ただけでは反則ではありません。ボレー動作中にパドルや身体が床面のキッチンへ触れないようにします。
外でボレーした後、相手がミスしてから中へ入っても反則ですか?
そのボレーの勢いで入った場合は反則です。ボールがデッドになった後でも同じです。
片足だけ外へ出せばボレーできますか?
直前にキッチンへ触れていた場合、両足が完全に外へ接地してからです。
パートナーがキッチン内にいても、自分はボレーできますか?
自分が外にいて、ボレー動作中にパートナーへ触れなければ可能です。
30秒小テスト
Q1. キッチンは立入禁止区域?
A. いいえ。ボレー禁止区域です。
Q2. ラインを踏んでボレーしたら?
A. フォルト。ラインもキッチンです。
Q3. 外からボレーし、相手のミス後に勢いで入ったら?
A. フォルト。ボールがデッドでも勢いの判定は続きます。
Q4. 中から出て片足だけ外へ着き、空中でボレーしたら?
A. フォルト。両足の再接地が必要です。
入れる。ただしボレーしない。まずはこれだけ覚えましょう。細かな判定で迷ったら、「バウンドしたか」「何がキッチンへ触れたか」「勢いは終わったか」の順で確認します。
名前はキッチンですが、料理の腕は問われません。問われるのは足元です。先生は料理も足元も少し怪しいので、ラインから余裕を取ります。
前後の授業
参考にした公式情報
※本記事は一般的な立位プレーを想定した初心者向け解説です。高度なプレーやアダプティブ競技には追加・特別規則が関係する場合があります。大会・イベントでは、最新の大会要項、指定ルールブック、審判の指示を優先してください。


